Ferrari 360 Modena - F430

新世代フェラーリの進化論

Sport Spec’ and Super Sport Spec’

フェラーリ用サスペンションキットの定番 QRSでは、発売開始から12年以上経過した 360 modena であっても、新しい部品を使用したニュー・セッティングの採用=アップ・デートを繰り返しています。
なぜならば、タイヤの開発に合わせて減衰力特性の見直しが必要であったり、360 challenge stradare の固いシャーシであったり理由は様々です。
タイヤの進歩は、一般に考えられているよりはるかに早いテンポで進んでいます。
例えば、1996年にNSXでテストした時には、ハイグリップ・ラジアルで14k/12k 以上のバネレートを装着するとグリップ力が足りなくて、明らかなアンダーステアとタイムの低下が確認されました。
しかし、2000年になるとラジアルタイヤのグリップ力が大幅に向上し、まったく同じ車でも18k/16k がバランス的に良く、18k/20k でもタイヤのキャパシティには余裕すらありました。

また、同じF430であっても車種によるセッティングの味付けは変わってきます。
例えば、スタンダードなF430(特に初期型)はほぼ同じシャーシ形式を採用する 360 modena のセッティングでもある程度の完成度にあります。 しかし、360 modena のセッティングのままではリバウンド減衰力(伸び側)が強すぎて、ハリのある、ゴツゴツした傾向を示します。
特に、人知れず行われるマイナーチェンジによって、サスペンションのジオメトリーが変更されたのか、2006年以降のF430では乗り心地のハリと、リアのゴツゴツ感は顕著でした。
これは、フェラーリ社の開発が、レース仕様で車高を下げた時に適正なジオメトリーになるよう、ストリートの標準車高ではロールセンターを高めに設定したからと思われます。
なぜなら、ロールセンターを高く設定すると、重心とロールセンター(荷重移動の回転中心)が近づくため、振り子の原理で荷重移動が減るので減衰力は弱くて済むからです。
つまり、360 modena のジオメトリーのままでは、レーシングカー用の減衰力に設定した場合、リバウンド側減衰力が強くなりすぎて、極端な話、ルマン24時間レースでのような長距離レースでは減衰力のタレ(発熱によるダンパーのヘタリ)の問題が出てきたので、ジオメトリーを変更してダンパーの減衰力を低く(=弱く)し、安定したダンパー性能を手に入れたのです。
そこで QRS でも、初期の商品から開発を進めて行くに従い、リバウンド側減衰力をどんどんソフトに変更していくわけです。

For the Next Generation

これが、F430 scouderia となるとさらに手が入ってきます。
モデル末期の、しかもレーシングカーのホモロゲーション・モデルとして位置づけされた限定車は、車重が軽く、エンジン出力も上げられていますが、それ以上に、次期新型車 458 italia のプロトタイプの要素も入ってきます。
このあたりの考え方はポルシェも同じです。 996 GT3 には前期モデルと後期モデルがありますが、最終モデルと言われている限定車=996 GT3-RS に使われている部品には、すでに997 の刻印が施され、減衰力の設定もまったく違ってきます。  したがって、F430 scouderia の減衰力はスタンダードな F430 よりもソフトにしていかないと高級車としての乗り味は出てきません。
このあたりの進化の度合いは、348GTB や F355 と言ったワンメイクレースしかなかった時代と違い、早いテンポで行われています。
ポルシェやアストンマーチン、はたまたコルベットZ06とガチンコのバトルをしているFIA-GT3の影響が大きく、速く走るための進化となっていて、GT選手権に出場するようなレーシングカーの開発手法が用いられています。
  • ワイドトラック
  • ロングホイールベース
  • 車高を下げてロールセンターが適正な位置に来る
360 modena & F430用サスペンションキットに使用するダンパーは減衰力調整式 T5-RS と、リザーバータンクを装備した 2way タイプの T3-CR の2種類です。セッティングの方向性によりシリーズAIRも準備しています。
フロントダンパーのセッティングは、ステアリングのレスポンスを追求したシングル・ダイグレッシブ。
リアダンパーは、トラクションを意識したリニア・リニアな特性で。
シリーズAIRは、大きなギャップでガチョンとなるところが、フワッとやり過ごす懐の深さが特長です。

Development Experience.

QRSでは、Dino 246~308/328~348~355~360~430~458。
歴代フェラーリ(V8)用サスペンションキットを全て開発してきました。
脈々と続く進化の過程を紐解きながら進めてきた商品開発。その過程において、ミッドシップ・レイアウトゆえの進化の方程式を探りながら作業して参りました。

360 modena & F430は、 F355のシャーシからフロントサスペンションのジオメトリーを除いてほぼ完全にリニューアルされた新設計。
伝統の高張力鋼板とパイプフレームの組合せから、アルミ・ハニカム・モノコック構造となり、取り付け関係の全面的な見直しが行われました。 その進化の度合いは、Dino246~F355 の30年間よりも大きな変化。
特に、リアサスペンションの全面的な見直しは、F355で問題となっていたリアダンパーの自由長に対する有効ストロークのバランスを、抜本的に改善することに成功しました。

360 modena のノーマルサスペンションは、ソフトなフロントスプリングが要因となって起こる過大なロール。それが引き金となって、リア荷重が抜け、おもしろいくらい飛距離の長いドリフト状態に陥ります。
F430 はこのあたりの改善が見られますが、それと引き替えに、ゴツゴツした乗り心地はいただけません。
QRSの開発も、この相反する要求に対して、下記のような方法でそれを克服しています。
  • あえて固めのバネレートを採用、プリロードを抜いてダンパーに装着する。
  • 低圧ガスモノチューブ構造により、当たりが柔らかで、レスポンスに優れる減衰力特性。
  • バンプラバーにあたるまでの有効ストロークを吟味し、ABSの介入を極力なくす。
F430 チャレンジ・カップ(ワンメイクレース)では、QRS 装着車だけが岡山国際サーキットで1分36秒台に突入しました。
F430 challenge 標準ダンパーを装着した車は1分39秒台だったことからも速さが際だちます。
前後で減衰力特性かえるなど、ダンパーが固いとか柔らかいだけでは決して成し得ないこの速さは、ダンパーの過渡特性まで煮詰めていった結果です。
QRS では、これらサーキットでの開発をストリートのセッティングにも生かし、高級車としての乗り味と速さの両立の根拠としています。  車高を瞬時に上げるPSPデバイスも後付部品では成し得ない完成度、インジケーターキャンセラーも好評です。
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